自転車と道路


 ヨーロッパを旅行すると、市街地でも田舎道でも、自転車のための通行帯が実にきちんと作られているのに感心させられます。

 
自動車道路に沿って延々と、何百キロにもわたるサイクリング道路が続いているのを見ると、うらやましくなります。

 我が国でも将来、エコロジービジネスが盛んになれば、自転車道路がもっと造られるようになるでしょう。




 
これは、「月間かがくのとも(福音館書店発行) 2001年10月号 じてんしゃにのろうよ」の折り込み付録「自転車が走れるところ」の容の一部です。
 文だけでも、頭の中に、ヨーロッパの自転車道路の風景が鮮やかに浮かんできます。

 
本には、作者である横溝英一氏のスケッチ風の挿絵もあり、とても印象的でした。


 横溝英一氏は、「はこねのやまのとざんでんしゃ」など多くの著作がある作家で、自転車の愛好家でもあります。
 ヨーロッパでは、いかに自転車道の整備が進んでいるかが、とても具体的に分かります。


 今の日本では、ごく一部の「自転車通行可」の歩道がある道路と、これまたほとんど見当たらない「自転車専用道」は別として、自転車で道路を走っていると、ほとんど常に身の危険を感じます。
 危険を感じる度合いは道路にもよりますが、狭い道路で後方から大型車が来た気配を感じた時などは、本当に怖い思いをします。
 自転車は道路交通法上の「軽車両」に該当しますので、車道がいくら危険でも、「自転車通行可」のところ以外は歩道を走ることができません。

 「有害な排気ガスを出さない」「健康的」「経済的」「駐車や渋滞などの問題を減らせる」など、自転車のプラス面は枚挙にいとまがありません。
 
 反面、マイナス面をあえて挙げるとすると、「車道の端や歩道を走る際に、歩行者に危険を与える可能性がある」「車道を走る際に、車の邪魔になる」などです。
 それ以外には、「乗る人のマナー」の問題がありますが、そのマナーについては、自転車の欠点とは言えません。
 自転車は、マイナス面はとても少ない、優秀な交通機関と断言できます。


 
でも、よく考えてみますと、このマイナス面は、全て日本の通常の道路や自転車専用道の整備が極めて不十分ということが、主な原因になっています。


 「日本は国土が狭いから自転車道の整備なんてできない。無理。」という人もいます。
 でも、車道に沿った歩道の整備ができるのですから、少なくとも道路を新しく造ったり、あるいは改修したりする際には、自転車道を造ることも可能なはずです。
 歩道と自転車道とは、それほど道路幅が変わらなくても運用できるということは、駅の近くに自転車走行レーンと歩道とがほぼ同じ幅で共存しているという事実が、如実に示しています。
 このサイトの作成中に横溝氏の文章に接したことで、そうしたことを改めて確認することができました。


 このサイトの作成を進めながら、
「京都八幡木津自転車線」の存在価値を改めて確認すると共に、自転車専用道がどんどん造られる、そんな時代が早く日本にも来て欲しいと強く感じました。


 
横溝氏は、「このサイトに、氏の文章を引用させていただきたい」との私の厚かましい申し出を快諾してくださいましたが、その際いただいたFAXで、次のようなことも教えてくださいました。自転車道に対する私の乏しい知識が、とても深まりました。(日本とヨーロッパでは、一体何が異なるのでしょうか?日本の道路が貧弱なのは、「国土が狭い」「人口が多い」ということだけで説明が付くとは、とても思えません。ヨーロッパも我が国も、基本的な条件はそれほど違わないはずだとgodzillaは考えています。)



 
スイスの自転車交通については、サイクリング人口が多いこと、それは他のヨーロッパの国でも同じですが、特にスイスの場合は自転車が利用しやすいようにできていると思います。

 アルプスの山地を走る電車には、自転車だけを積み込む車両が、1両連結されています。(例、氷河急行路線の鈍行列車)

 乗客は目的の駅に着いたら自分の自転車を受け取り、ホームの上からそのまま走り出せるのです。
 小学生くらいの子どもも混じって、みんなそろって壮大なダウンヒルを楽しむのを見ていると、本当にうらやましくります」



 
また横溝氏は「こんなことは我が国の駅でも、やろうと思えばできることでしょうね。」と続けておられました。
 本当にその通りだと痛感します。

 自転車がもっともっと快適に利用できるような、施設と道路の整備、それに「氷河急行路線」(いい名前ですねえ・・・)のような方式が日本でも実現するよう、あらゆる機会を通して声をあげていきましょう。



※月間:かがくのとも 2001年10月号 「じてんしゃにのろうよ」の折り込み付 録「自転車が走れるところ」からの引用につきましては、引用をお願いしたと ころ、横溝英一氏がご快諾くださいました。
 横溝英一氏と、福音館書店の編集部の皆様のご協力に、心より感謝申し上 げます。




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